あなろぐばあちゃんのつぶやき

Yahooブログ育ち、4人の孫のおばあちゃんです。

新しい命

入院中に親しくしていただいたある女性のことを書きます。

 彼女は時として、暴走する感情のコントロールができず苦しんだりする患者さんでした。
 でも退院間近になって興味本位で入り込んだ喫煙室では、うちとけて穏やかな彼女と、たくさんお話をしました。お部屋のトラブルで何日も眠れず、明け方のデイルームで泣いている私の背中をさすってくれたり、本当はとてもやさしい人でした。

 私より少し若いのに、波瀾万丈の経験をなさった方でした。
 その経験のひとつは、未婚で出産し生後間もない赤ちゃんを亡くされていることでした。
 小さい命が尽きたことを医師に告知されても、彼女は受け入れることが出来ませんでした。赤ちゃんにお乳のしずくをふくませたそうです。すると一瞬赤ちゃんの頬がバラ色に輝き、見守っていた医療スタッフも声をあげたそうです。そして、腕に抱いたまま冷たくなっていくのを確かめ、その生まれたての命とお別れをしたそうです。
 子どもを亡くした母の辛さ、悲しさとともに、彼女が私に語ってくれたのは、たとえ数日でも我が子を抱けた母としての喜びは語り尽くせないほど大きいというものでした。

 どんな困難な境遇にあっても、新しい命は全ての人に希望を与える存在なのだと、彼女は私に教えてくれました。尊く素晴らしいこととして、私の胸に深く刻まれています。

 出産がヒトとしての自然の営みであることを思う時、「産まない選択」を社会のせいと許す人が80%の社会で、これを理不尽と受け止める「常識」を私は貫きたいと思います。

 人よ傲ることなかれ。